撮影(大会当日):谷口 巧
撮影(インタビュー):佐々木 明日華
補給食に生八つ橋、舞妓さんの応援!京都マラソンはその名の通り、徹底的に京都ならではのマラソン大会だった
撮影(大会当日):谷口 巧
撮影(インタビュー):佐々木 明日華
「DO YOU KYOTO?マラソン」「みんなが主役」をメインコンセプトに掲げた京都マラソンは、他県とは異なる魅力や趣向にあふれていました。
ぜひ体験せねばと、2050 MAGAZINE編集部も参加!マラソン初体験のメンバーは、どんな体験ができたのでしょうか?京都マラソンを作り上げている京都市 市民スポーツ振興室・齊藤尊久さんと目片洋さんと編集部による後日談です。
京都マラソンとは
今回で13回目。「DO YOU KYOTO?マラソン」をメインコンセプトに掲げたマラソン大会。これは、「環境にいいことしていますか?」という意味の合言葉であり、環境先進都市・京都にふさわしい大会として、環境に配慮した大会運営を積み重ねている。京都を肌で感じられる、起伏に富んだコースがその魅力。今年は、国内外から約16,000人のランナーが集った。
京都らしさを満喫!沿道から届く、舞妓さんやお坊さんの応援
齊藤尊久さん(以下、齊藤さん) 京都マラソンへのご参加、ありがとうございました!実際に走られてみて、いかがでしたか?
2050編集部(以下、編集部) 初の京都マラソンでしたが、全員無事に完走できました!普段、自転車や車で何気なく移動している場所の距離感が、より身体的に感じられましたね。鴨川って長いんだ!御所はかなり大きい!……と、街のスケールをまざまざと感じられた気がします。
総勢1.6万人の参加者が一斉にスタートする様は圧巻の一言!ボルテージも一気に高まります
齊藤さん よかったです!送り火の五山すべてを眺望できるコースは、走りながら一通り観光もできるとあって、京都マラソンの人気ポイントのひとつです。
編集部 いやあ、京都の名所を巡りながら広い道を走るのはかなりの開放感でした。あとびっくりしたのが、沿道の応援がずっと絶えないこと。しんどくてめげそうになったときに、本当に力になりました。
市長や応援大使の皆さんからの応援も背中を押してくれました。京都マラソン初参加の編集部もこの時はまだ余裕があります(笑)
目片洋さん(以下、目片さん) 約40万人の声援です。仁和寺では法螺貝を吹いたお坊さんたちからの応援もあったでしょう?
編集部 はい、思わず二度見しました。京都府立植物園では、舞妓さんも応援してくださって京都ならではだなと風情も感じました。立ち止まって記念撮影するランナーもたくさんいましたね(笑)
日本最古の公立総合植物園である『京都府立植物園』。コースは京都の名所が目白押し!
ランナーの活力となる沿道の応援!舞妓さんや和太鼓、チアダンスなど、さまざまな形で盛り上げてくれました。
編集部 生八つ橋や苺、プチトマトなどが、補給食で充実していて、京都の食に支えられて走りきれたと思います。生八つ橋を食べながら走るなんてイメージできなかったんですが、実際に走っていると、疲れた体に生八つ橋の旨さが染み渡りました!
齊藤さん 鴨川沿いを走りながら、京都土産を食べながら走るなんて、京都在住の方でもなかなかない、京都らしさを満喫できる経験ですよね。ちなみに補給食の多くは、京都の協賛企業様からご提供頂いているものなんです。
編集部 え?そうなんですか?
コース沿道に設けられる計14ヶ所の給水所には『生八つ橋』や 『京ばあむ』など、京都ならではの給食が並びます。参加する前は「走ってる最中だと食べづらいのでは…」と半信半疑でしたが(笑)、疲れた身体に染み渡る素晴らしい給食でした!
目片さん はい。京都マラソンの趣旨と目的に共感してくださった企業様です。他にもボランティアとスタッフが1万3千人、沿道の一般応援者は約40万人と、みなさんがいてこそ成り立っている京都マラソンなんです。
齊藤さん 京都マラソンは、「みんなが主役」をメインコンセプトに掲げて運営しています。これは、ランナーだけでなく、支える人や応援する人、マラソンに関わる全ての人が主役という意味で、京都マラソンの世界観を表現するものです。
今年から復活したハイタッチゾーン。疲れた身体にパワーが流れ込みました!応援者が着けている手袋は、エコ素材でつくられた京都マラソンオリジナルのもの。
多くのボランティアスタッフさんや沿道からの応援が本当に印象的で、やさしい空気が流れていました。そしてみんなが活き活きと参加していることも実感できました。まさに「みんなが主役」!
齊藤さん 沿道からの応援やランナーをもてなす多くのボランティアスタッフさん、そして協賛企業と、すべてが一体となって成り立っているのが京都マラソンらしさ。早春の京都を象徴する風物詩になっています。
編集部 参加してみて、京都マラソンには、京都の面白いトピックスがぎゅっと凝縮されている気がしました。一緒に走った仲間たちとの絆も深まったように思います。
タスキと市の環境マスコット「エコちゃん」をつなぐ編集部チーム。皆さんの支えがあって全員無事完走!
齊藤さん ランナーや応援という形以外でどなたでも入場無料で京都マラソンに参加してもらえる企画も用意しています。それが、大会前日と前々日に開催している「おこしやす広場2024」。大会スポンサーによるブースや京都の有名料理店の「おもてなし屋台」、お茶席など、京都らしさを体感していただける場となっています。
編集部 会場に入った時から、ボランティアの皆さんが拍手で出迎えてくださるという歓迎ムードでした。マラソンコースの模型では、直前に控えているマラソン当日を想像できましたし、京都の伝統工芸職人による実演・体験コーナーでは、匠の技を間近に見られてワクワクしました。もう盛りだくさんの内容でしたね。
齊藤さん 「おこしやす広場2024」が、ランナーでない方たちにとっても、京都マラソンの楽しみ方の一つになってもらえたら嬉しいです。
環境配慮への取り組みを、マラソンを通して触れる
目片さん 環境先進都市・京都にふさわしい大会として、もう一つ大事な大会コンセプトがあります。それは「DO YOU KYOTO?マラソン」。環境に対する取り組みをさまざまに実施しながら、京都から地球と人々を健康にする気概を持って、マラソン大会という場を活かして、京都から世界に向けて発信しています。
編集部 実際に参加してみて、大会の各所で行われている、さまざまな環境配慮への取り組みに気がつきました。
齊藤さん ちなみに、第1回から取り組んでおり、すべての大会でエコイベントの認定を受けているんですよ。金メダルは、京都市内で回収された使用済みの小型家電から抽出したリサイクル「純金」を使用しています。また、入賞者に贈るメダルリボンについては、男子と車いす競技は京くみひもで、女子は手描き京友禅で制作した、京都ならではの伝統工芸品です。完走メダルの首掛けリボンは、京友禅柄で制作しました。給水ポイントでのマイボトルの使用も推進しています。
編集部 スタート会場で走る直前まで着ていた防寒着が、リユースされる取り組みもランナーのニーズと合っているなと感じました。あと給水所に設置されているリユース可能なゴミ箱も、アイコニックなブルーカラーとともに印象に残っています。京都マラソンでは、地面へのゴミ捨てが禁止されている分ゴミ箱の設置数も多くて、走っている途中のゴミ捨てに困らなかったです。
編集部 そういえば、「おこしやす広場2024」には、使用済み衣類の回収ボックス(※)もあって、不要になった洋服のリユースへの取り組みも行われていましたね。
(※)使用済衣服の回収&循環プロジェクト『RELEASE⇔CATCH』
齊藤さん はい。ボランティアスタッフ用のウエアも、イベント終了後に京都市が回収。再利用可能なものはクリーニングして、来年度に再利用するという、他の大会ではあまり見られないエコ視点での取り組みです。
齊藤さん また京都マラソンの当日は、「ノーマイカーデー」とさせていただいています。そのあたりのご理解も、市民の皆さんの応援あってこそ。ありがたく感じています。
編集部 私は京都市在住なのですが、実際に参加してみて「ノーマイカーデー」を応援する気持ちが生まれました。参加した結果、運営やボランティアの方々の意識の高さを感じたり、企業を知ったり、改めて京都のことが好きになって、京都市の環境への積極的な取り組みが理解できた気がします。
とりあえず、エントリーしてみるべし!
齊藤さん 突然なんですが、実は私自身もマラソンが趣味で、これまで過去6回も、個人的に京都マラソンに参加してきたんです。
編集部 そうなんですね!
齊藤さん 今の部署に配属されて、マラソン大会運営の裏方を担当することとなり、これだけ多くの人に支えられて運営できていることをまざまざと感じています。
編集部 リアリティがありますね。実際にマラソンを走られている人だからこそ気づく配慮や目線も、各所に反映されているのでしょうね。
目片さん 京都マラソンは競技性よりも、楽しんで走っていただくことに重きを置いています。マラソンと聞くと構えてしまいがちですが、ジョギング感覚でもいいし、なんなら歩いてもいいんです。もっと多くの人に参加していただくために、第一歩のハードルを下げたいという思いが僕にはあります。
ちなみに僕のおすすめは、先にエントリーしてしまうこと(笑)。決めてしまうと走らなければいけなくなって、練習して、完走した後の達成感でだんだん楽しくなってきます。僕はまんまとその流れで、マラソンにハマってしまいました。
齊藤さん マラソン大会って、府外の人向けのイベントだと思われがちですが、本来の目的は市民スポーツの振興なんです。申込みにも京都市民枠を設けて、市民の抽選の率を上げられるように配慮しているので、ぜひ京都市民の方にももっと気軽に参加していただきたいです!
編集部 僕たちも来年もぜひチャレンジしてみたいです。最後に、お二人にとって京都マラソンとはなんでしょうか?
齊藤さん・目片さん そうですね、目指すところは、「第4のお祭り」でしょうか(笑)。京都には3大祭り(葵祭、祇園祭、時代祭)がありますが、そのもう一つを京都マラソンが担えたら嬉しいです。
編集部 まさに「みんなが主役」ですね! 京都を満喫できるマラソン大会自体の魅力だけでなく、それに負けないくらいのさまざまな環境配慮への取り組みを感じることができました。マラソンを通して、結果として京都のファンが増えて、京都のことがもっと好きになる。京都在住の僕たちにとっても大切にしたくなる大会でした!
おわりに
京都の魅力が詰まった京都マラソン。完走後の「茶の菓」が本当に美味しかったのが忘れられません。そして鴨川を下るエリア、京都市役所前のエリア、京大前あたりのエリア……、そのほかもそれぞれの場所でもらう大きな応援。練習で何度か同じコースを走っていたものの、レース当日はその道に沢山の応援者が集まっていて、全く違う景色で、コースの周りが活気に満ちていました。
実際に走ってみて驚いたのは、オープンマインドになれたこと。周りに応援されながら、完走する達成感と湧き上がるあたたかい感情は、走ってみて初めて感じられるものかもしれません。マラソンにハマる人の気持ちも少し分かりました。
翌日に街に出ても、マラソン関連と思われるゴミ類は全くなく、運営やボランティアの方々の意識の高さも感じられました。京都市の環境への取り組みやメッセージが、大会を通して伝わりやすい環境が築かれているようです。日本に京都があってよかった、そして京都に京都マラソンがあってよかった! 府外の方だけでなく、京都市民にもぜひ体験していただきたいです。京都の魅力を再発見できると思います。
取材協力:QUESTION
京都市 文化市民局
市民スポーツ振興室では、「スポーツの絆が生きるまち推進プラン」京都市市民スポーツ振興計画に基づき、「する」「みる」「支える」それぞれの観点から市民スポーツの振興を推進するため、様々な取組を実施しています。
プロスポーツチーム等をはじめとするスポーツ関係団体との協力・連携、スポーツ施設の整備・改修・管理運営、京都市体育振興会連合会等との連携・協働などに取り組むとともに、市民スポーツフェスティバルや京都マラソンの開催など、各種スポーツイベント等を実施しています。 市民スポーツ振興室の記事一覧へ >
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