社会問題に関心を持つ人を育てる「ヒューマンフォーラム」
京都市では、2050年カーボンニュートラルに向け、温室効果ガスを排出しない社会・経済活動への転換が生活の質の向上や豊かさにつながる京都発脱炭素ライフスタイル推進事業を進めています。
そのためには、市民の皆様一人ひとりの生活を、脱炭素ライフスタイルに変えていくことがとても重要です。でも、脱炭素なライフスタイルって言われてもよくわからないし、めんどくさそう、何かを我慢としないといけないのか……と思われる方も多いのではないでしょうか。
脱炭素ライフスタイルに変わるきっかけは何でもいいんです。気づいたら、オシャレに、楽しく、無理なく実践できていてこそ、真の脱炭素ライフスタイルだと私たちは考えています。
連載「オシャレで、楽しくて、無理のない脱炭素ライフスタイル。あなたも参加しませんか?」では、参加することで日々の生活がちょっと脱炭素に近づいていくような、身近な事業者の皆様をご紹介します。
※2022年に公開した記事をリライトして掲載しています。
あなたは、お気に入りの洋服に穴が開いてしまったらどうしますか?
ゴミとして捨ててしまいますか。それとも、もう一度穴を縫って直しますか。
実は今、日本では年間48万トンの洋服が廃棄(※)されています。これは、毎日大型トラック約130台分の服が焼却・埋立されている計算になるそうです。その事実に向き合い、環境への負荷を減らそうと取り組んでいるのが、「株式会社ヒューマンフォーラム(以下、ヒューマンフォーラム)」です。
※参考:環境省(https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/)
全国に30店舗を持つ古着屋「SPINNS(スピンズ)」、古着の新しい価値を打ち出す「USEDを拡張する進化型古着屋 “森”」、「いきること」をテーマに衣食住にまつわる商品を扱う「mumokuteki(ムモクテキ)」などを展開しています。今回は、株式会社ヒューマンフォーラム 代表取締役社長 岩﨑 仁志(いわさき ひとし)さんに、環境に対する取組を始めたきっかけや、そこにある思いなどをお聞きしました。
7世代先のことを考えて、社会問題へ取り組む
ーーどのようなきっかけで、環境に対する取組が始まったのでしょうか?
NPO法人「セブンジェネレーションズ」と出会ったことがきっかけです。「セブンジェネレーションズ」とは、インディアンの古い言葉で「7世代先のことを考えて今の意思決定をしよう」という意味。その人たちから影響を受けて、環境に対する負荷に向き合わなくてはと感じました。
そういった意識から「ザ・トゥルー・コスト 」という、ファッション産業がどれだけ環境の負荷になっているかを描いた映画を見ました。この業界に関わる以上は知っておいた方がいいと思って、幹部社員全員で見たのですが「ダメなことは分かったけど、どうしていいか分かりません」と、みんなが暗い気持ちになっただけで、アクションにはつながりませんでした。

岩崎氏
本格的に動き出したのは、「信頼資本財団」の社会事業家を育てるプログラム「A-KIND塾」に幹部が参加し始めてからです。世界や日本が直面している社会課題や、課題解決のためにどういった思考であるべきかを学び、考えをアップデートしました。社会でもSDGsへの興味関心が高まっていたので、一人ひとりに意識が芽生えたんでしょうね。
ヒューマンフォーラムの考える「環境への取組」
ーー例えば、どのような取組に、力を入れているのでしょうか?
サステナビリティを実現する一番の取組は、「人材育成」だと思うんです。環境改善に直接つながるわけではありませんが、ビジネスも社会問題も学び、それを実践していく人達が増えることで、だんだん社会も環境もよくなっていくと考えています。未来を担う人が力の発揮できる環境にしていくことが大事です。

勉強会の様子
「mumokuteki」では、1年かけてSDGsの勉強会をしています。勉強することで社員一人ひとりの意識や行動が変わり、マイボトルを持ち始めた人もいるし、スタッフからの提案でコンポスト(生ゴミから堆肥を作る容器)を販売することも決まりました。「SPINNS」では、不要な古着を回収するボックスを設置しています。

古着を古着で終わらせないために
5年前(2017年頃)からは過剰在庫をなくすために仕入れ予算をコントロールし、適切な仕入れをする仕組みを整えました。一企業である以上、環境問題に取り組むだけでなく、ビジネスとして成り立たせる必要があります。そのため、経営の指標も売上追求型ではなく、利益追求型に変化しました。
ある店舗の店長は「包装紙を減らして、経費を削る」という策を編み出しました。利益を追求することで、無駄な在庫が減り、同時に環境への負荷を減らすことにつながっています。現在では、過剰在庫による洋服の廃棄がほとんどありません。
地域との連携「京都古着域内循環プロジェクト」
ーー京都信用金庫と「京都古着域内循環プロジェクト」に取り組もうとされていますね。
先ほど、「SPINNS」で古着の回収ボックスを設置していると言いましたが、洋服が集まった後の出口の設計に関する課題はたくさんあります。状態の良いものは再び古着として販売しますが、残りは買取業者が海外へ送るため、その後は不透明です。出口まで透明性を持って取り組もうとしているのが、「京都古着域内循環プロジェクト」です。

SPINNSでは、古着をリメイクしたアイテムも販売
京都信用金庫の各支店などにも古着回収ボックスを置き、集まった古着を「SPINNS」で再販売する。どうしても販売できない服や肌着は、古着をリサイクルし、糸・生地・最終製品に作り替える技術を持つ企業と連携し、リサイクルを行うことで透明性の高い取組にしたいと考えています。
しかし、回収するほど古着の処理費用と送料がかかってしまいます。京都で完結する方法はないかと、最良な方法を模索している最中です。
愛着を持つことで「物」が「パートナー」になる
ーー洋服の廃棄を減らすために、2050年に向けて私たちが取り組めることは何でしょうか?
2050年には人口が1億人を下回り、海の中の生物とプラスチックの量が一緒になると言われています。でも、僕はみんなの努力次第で、より良い2050年を迎えられると思うんです。そのためにはまず、愛着を持って物を長く使うという体験を大切にしたいと考えています。

「進化型古着屋 “森”」の中にはリメイクやリペアを行う工房がある。
サステナブルには、「引き伸ばす」という意味もあります。衣類をゴミとして捨ててしまうことは簡単ですが、愛着を持って使い、捨てるまでの期間を引き伸ばしていく。それは一人ひとりができることだと思うんです。
ーー岩﨑さんが愛着を感じて、大事にしているものはありますか?
自分の欲しいサイズ、欲しい色にこだわって選んだサーフボードですね。妥協して買うと、他のものに目移りしてすぐに買い替えたくなりませんか?妥協のない物を買う方が愛着が湧き、信頼して長く付き合っていけます。そうやって手に入れたものは、「物」というよりも「パートナー」という感覚です。

岩崎氏のジャケット
今、僕が着ている60年代のジャケットは、ポケットは外れているし、ボタンもない。今度友人に直してもらうんですよ。直しの跡があるほどかっこいいと思うし、友人の手が加わることで、より愛着が湧く。「長く付き合えるパートナー」を探すように、一人ひとりが愛着を持って物を大切にすることができれば、より良い未来を迎えられるのではないでしょうか。
※現在では、「使用済み衣服の回収プロジェクトRELEASE⇔CATCH」として取組が進んでいます。
関連リンク
・株式会社ヒューマンフォーラム
・「使用済み衣服の回収プロジェクトRELEASE⇔CATCH」
https://doyoukyoto2050.city.kyoto.lg.jp/projects/release-catch/
・RELEASE⇔CATCH
・循環フェス
アパレル・飲食
全国に「SPINNS」「mumokuteki」「USEDを拡張する進化型古着屋“森”」などアパレルやカフェなどを運営。この度、株式会社ヒューマンフォーラムが中心となり、京都市内を中心に、御家庭で不要になった衣服を回収する回収BOXを設置し、回収した衣服のうち再利用可能な衣服を販売することで、市内で循環させるプラットフォームを創出します。
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