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横江 一徳さん
妙心寺塔頭 養徳院 副住職
インタビュー・文:杉田 真理子
インタビュー:松本 紗代子
撮影:原 祥子
Stories2022.10.14
Vol. 03
持続可能な暮らしも、”自分がやりたいから”。自分自身と向き合うことで、豊かな未来のための変化を探る
2022.10.14
インタビュー・文:杉田 真理子
インタビュー:松本 紗代子
撮影:原 祥子
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「持続可能な暮らし」という言葉をよく耳にするようになった昨今。海外の事例や新しい実践に目が向きがちになりますが、日本で古くから行われてきた実践にも、多くの学びがあるはずです。

古くから連綿と続く伝統を守ってきたお寺から、どのような持続可能な暮らしへのヒントを得られるでしょうか?

京都市右京区。400年以上の歴史を誇る禅宗大本山妙心寺、塔頭養徳院で副住職を務める横江一徳さんに、「日々の暮らし」をテーマにお話をお伺いしました。
目次

「持続可能な暮らし」が叫ばれる前から、連綿と続いてきた実践

杉田 真理子(以下、杉田) 本日はお時間ありがとうございます。養徳院のお庭がとても綺麗で、朝ここに来ただけで元気になりました。まずは、自己紹介をお願いできますでしょうか?

横江 一徳さん(以下、横江さん) 大本山妙心寺塔頭 養徳院にて、副住職を務めさせていただいております、横江一徳と申します。中学校で宗教の授業をしたり、精進料理や坐禅などを通じて、禅の教えを皆さんに知っていただくための取り組みをしております。

杉田 副住職としての暮らしがどのようなものか興味がありますが、まず現代人の生活の変化について、どう思われていますか?

横江さん 私も皆さんと同じ市民ですので、皆さんの暮らしとそこまで違いはないのではと思いますね。買い物もしますし、お酒も飲みます。お肉を食べることもあります。

あえて違いがあるとすれば、皆さんは大変忙しい生活をされているな、と感じることが多いです。何をするにしても時間に縛られていて、不確かな未来に対して予測を立て考すぎてしまい、ストレスを抱えながら生活してらっしゃる印象はありますね。

もちろん我々にもやるべきことはありますが、どちらかというと、目についたことをまじめにひとつひとつこなしていく感じです。

杉田 確かに、私たちはついつい未来のことばかり考えて、あくせくしながら生きている気がします。そんな現代社会において、住職さんは私たちとは全く違い世界にいらっしゃるのかな、なんて想像してしまいますが、そもそも住職とは、どのような存在であるべきなのでしょうか?

横江さん 「こうあるべき」という考え方をした時点で、私たちは囚われてしまっていると思います。世間一般の評価のなかで、あなたはどうあるべきか?という質問ほど意味のないことはない。皆さんが考えておられる「こうなるべき姿」は、誰にとっての姿なのか?果たして自分に向いているのでしょうか?

あなたはどう、世の中はどう、は別の話です。「こうあるべき姿」、というものは変わっていくもの。そのなかでも真意として持っておくべきものは、自分の決断のなかで決めるべきです。周りに何を言われようと、最後にものごとを決めるのは自分です。自分で生きることを、軸にしていくべきだと思います。

杉田 自分とまず向き合うことが大切、ということですね。因みに横江さんは、普段の生活でサステナビリティを意識されることはありますか?

横江さん 普段から意識しているというよりは、皆さんに言われてハッと気付かされることが多いですね。庭の掃除をしていて、落ち葉を堆肥にしたり、あるいは燃やしてその灰を堆肥と混ぜて畑に使ったり、我々は何も考えずに修行中からしているわけですが、そういうことがやはり持続可能な生活だと周りによく言われるわけです。ただ、我々は意識せずにやっています。

杉田 なるほど、サステナビリティの重要性について議論される前から、既に当たり前に実践されていた、ということですね!

横江さん 「サステナビリティ」「持続可能」といった言葉には力があります。言葉にすることで、行動に起こせたり、人を巻き込んだりできる。でも、この言葉が叫ばれ始める以前から、我々の先祖たちは当然のことのようにやっていたわけです。それを、なぜ今わざわざ騒ぎ立てないとできないのか、それを考えていく必要があります。

昔はできていたのに、今はできていない。それは、技術やシステムに甘えきった現代人の罰だと思います。なぜこの「持続可能な暮らし」という考え方が昨今生まれてきたのか、その根本を理解する必要があります。

 

当たり前の生活から自身を見つめなおす

杉田 養徳院での基本的な暮らし方のなかで、より持続可能な生活のヒントになるものがあれば、教えていただきたいです。横江さんは、普段どんな1日を過ごされているんですか?

横江さん 朝起きたら、まずは庭を掃除します。これを日天掃除といって、毎日行なわれる寺院内外の清掃です。その後おつとめをして、精進料理の会や座禅会、法要などを行います。朝の日天掃除で気づいたことがあれば、空いた時間でまた掃除をしたりもします。決まり決まった定時があるわけではないので、時間に縛られず、その時その時で必要なことをしている感じですね。

杉田 精進料理を通して禅の教えを広める活動をされているとのことですが、なぜ精進料理に注目したのでしょう?

横江さん 禅宗のお坊さんであれば、修行道場で台所番に立つので、料理は大体できるようになります。私はもともと料理が好きだったこともあり、精進料理を通してだと、皆さんに伝えたいことをより伝えやすいと思いました。

杉田 そもそも、精進料理とは….というところからお話を聞いても良いでしょうか?

横江さん 肉・魚・卵といった動物性のものを取っ払ったものが精進料理と言われていますが、精進料理は、ただ野菜を食べるだけではありません。実際は、食材一つ一つに向き合うということが精進料理の根本かと思います。

精進料理を作っていると、皮も使うので、生ゴミは出ません。歯触りが悪いものは自分達で食べれば良いですし、ヘタなど食べにくい部分は、ぬか床に入れれば良いわけです。それでも余るものは、干して出汁にします。野菜のブイヨンはヨーロッパにもありますが、出汁は椎茸と昆布だけじゃないんです。それ以外、どうしても使えないものだけ、コンポストすれば良いわけです。

横江さん 食材の全てを使い切ることは、努める、つまり「努力をする」ことです。精進料理の「精進」とは、努力をすることであり、努力する料理が精進料理なんです。

高いものを買えば美味しいものができるかもしれませんが、そうではなく今手に入るものでどう美味しいものを食べてもらおうと思ったら、手間をかけるわけです。手間すなわち努力ですね。そのようなことを、精進料理を食べていただきながらお話させていただいております。家庭でもできることです。家族や自身を思いやる気持ちが家庭の味です。これはお店では出せないものです。

杉田 なるほど!精進料理と聞くと高くて手の出しにくいイメージがあったのですが、そうであれば家庭でも作れる訳ですね。ぜひ、横江さんの精進料理の講座を受けてみたいです。

横江さん 現在ではコロナもあるので、精進料理についてはオンラインでも講座を行なっています。皆さん、食材の使い方など気づきを得ていただいて。今では時短が大切だと言われていますが、空いた時間に下ごしらえをしてでもやりたい、と言ってもらえた時は、嬉しかったですね。その手間は、心の持ちようひとつで、楽しみにもなります。

杉田 美味しい料理を作ろうと思っても、良い食材はどこで調達すれば良いのか、分からない方もいると思います。どこで買い物などすると良いのでしょう?

横江さん 良い食材とは、どういうものでしょう?オーガニックでしょうか。痩せていたり、あくがあったりすることも多い。なので、良い食材どうこうという話ではなく、そこにあった食材をどう美味しくしていくか、が大切だと思うんです。カボチャが硬ければ、ゆっくり炊いてあげればいい。ナスが固かったら、油でさっと揚げて煮浸しにしてあげるのが良いんです。

禅宗で、「至道無難、唯嫌揀択(しどうぶなん、ゆいけんけんじゃく)」という言葉があって、要は選り好みをするな、ということです。通年スーパーに行けばどんな食材でも手に入るわけですが、日本の食料自給率はいまだにとても低いです。経済も安定しないなか、日々物価も上がり続けています。であれば、もっと野菜を作ればいいし、どんな食材を使っても美味しいものを作れる技術を身につけるべきです。美味しいものを食べるのに、最高級食材を使う必要はありません。

 

持続可能な暮らしも、「自分がやりたいから」

杉田 持続可能な暮らしを、何故しているのかを考える必要もありますね。

横江さん そうです、周りに言われたからとか、優越感に浸れるからではなく、自分がやりたいから、心地いいからやる、となれば良いなと思います。今やっていることは自分がやりたいからやっているんだ、ということを大切にする必要があります。

我々は地球に生きている一生命体にすぎないわけですから、要は蟻と一緒です。地球に生かされているわけで、そのなかで自分は何ができるのか、考えるが大切です。

杉田 毎日されるという日天掃除についてお話がありましたが、一徳さんにとって、掃除はどのような存在なのでしょうか?

横江さん 作務をする、と言って、修行の一貫です。白隠禅師坐禅和讃(はくいんぜんじざぜんわさん)の一節に「布施や持戒の諸波羅蜜、念仏懺悔修行等、其品多き諸善行、皆この中に帰するなり」という文言があります。

「六波羅蜜」という、人間が行うべき6つの正しい行いがあります。ほどこしをする「布施(ふせ)」、堪え忍ぶ「忍辱(にんにく)」、努力する「精進(しょうじん)」などがありますが、作務や日常の行いに一つ一つ向き合うことで、「六波羅蜜」は気づけば育まれると私は考えています。

私にとって掃除は、見返りを求めない努力であり、さまざまなことに気づかせてくれるありがたい時間です。掃除だけでなく、全てにおいてその心構えがあると良いかもしれませんね。それがないと、日々の細々とした行いも、忙しい日常生活のなかで単なるしんどい作業になってしまう。

杉田 自分と向き合う時間でもあるということですね。ちなみに最近では、シェアの概念がありますが、横江さんが買い物をしたり、ものを所有する時に意識することはありますか?

横江さん 私も皆さんと同じで要らないものを買ってしまうことはありますよ(笑)私も不完全な人間ですので。ただ、ものを買うときは、本当に必要なのかどうかを考える時間を長く持つことですね。自分で作れるものは自分でやればいい。便利だと思うものがあっても、実は既に持っているもので代用できるかもしれない。要らない、という判断も大切です。あとは、流行に流されて持つ、見せびらかしたいために持つ、ということは僕は一切やらないです。

手にとってみることも大切です。一生懸命大切にして使い、それが割れてしまったのであれば、それが寿命です。それでも使い続けたいのであれば金継ぎもあります。今では海外からも金継ぎは高く評価されていますね。私たちが海外の文化に憧れを持って見てこなかったものに、改めて目を向けてみましょう。内を知って外を見、その上で海外に素晴らしいものがあれば真似すれば良い。それが本当の相互理解です。

 

よく話を聞き、学んだうえで、あくまでも自分のペースで

杉田 横江さんが考える、”京都らしい”持続可能な暮らし方とはなんでしょうか?

横江さん 京都のいけず文化はよく聞く話ですが、さまざまな政治情勢が集まる都に住むうえで、どっちつかずは生き残る術、知恵でもあったわけですね。色んな人の言うことを聞いたうえで、自分はどうやって生きていくか。それを考える術を持っているのが京都の強みです。

今、脱炭素や地球環境について色んな話を聞くなかで、よく話を聞き、まずは知識として、自分の中に落とし込んでみましょう。そのうえで、どこかに極端に偏りすぎることなく、自分にできることを考えていく。これが、京都らしい持続可能な暮らし方なのではないしょうか。

杉田 ありがとうございます。では最後に、横江さんが目指す、これからの生き方・考え方を教えてください。

横江さん 振り切りすぎないことですね。環境のことを考えるのは良いことですが、それだけに振り切ってしまうと、それができていない人、興味がない人が悪に見えてしまう。大きな流れに追随せずに、できることから少しずつやっていけばいいんです。興味がない人がいれば怒らずに、自分が彼らの意識を変えるためにできることは何か、を考えればいい。自分のペースで、自分に向き合いながら、実践していけると良いなと思います。

Profile
横江 一徳
妙心寺塔頭 養徳院 副住職

龍谷大学社会学部コミュニティマネジメント学科でジャーナリズムを専攻。卒業後大本山建仁寺の専門道場にて2年3か月の修行ののち養徳院の副住職となる。精進料理や様々な催しを通じて禅を伝える取り組みを行う。花園中学高等学校の宗教科非常勤講師。若い方々が心を養い自分の考えを発言できる世の中を願い日々活動する。
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妙心寺塔頭 養徳院
臨済宗大本山

住所 :京都府京都市右京区花園妙心寺町53
TEL  :075-461-2898
開門 :6:00~17:00

※情報は2022年10月時点のものとなります
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Writer
杉田 真理子
編集者 / キュレーター
都市・建築・まちづくり分野における執筆や編集、リサーチほか、文化芸術分野でのキュレーションや新規プログラムのプロデュース、ディレクション、ファシリテーションなど、幅広く表現活動を行う。都市に関する世界の事例をキュレーション ・アーカイブするバイリンガルWebメディア「Traveling Circus of Urbanism」、アーバニスト・イン・レジデンス「Bridge To」を運営。一般社団法人「for Cities」共同代表・理事。2021年12月〜2022年8、アフリカの各都市でスマートシティ開発に関わるリサーチ・企画を行う。
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