Concept
2050 MAGAZINEについて
Interview 読む + 聴く
Column
深める
News
知る
Projects
参加する
Platform
広げる
People & Places
出会う
Vision Information
取り組む
Column2025.12.19
プロジェクト実証レポート
2025.12.19

〈インタビュー〉環境負荷の見える化プロジェクト
プロジェクト実証レポート

ライフスタイル転換のための仕掛け=プロジェクト

脱炭素に貢献するけど、脱炭素だけではない。

プロジェクトを通じて、
楽しい、かっこいい、ワクワクする魅力的な「変化」が起こっています。

今回は、「環境負荷の見える化プロジェクト」を始めた、Earth hacks株式会社 マーケティング企画部 部長 山本 海斗さん(以下、山本さん)に、プロジェクトに対する想いについてお話を伺いました。

「環境負荷の見える化プロジェクト」の取組内容はこちら(https://doyoukyoto2050.city.kyoto.lg.jp/projects/decabo_score/)をご覧ください!

― プロジェクトの背景や京創ミーティング参画の動機について

山本さんEarth hacksが会社化されたのが2023年からだったので、皆様との最初の出会い時は、おそらくまだ会社化されてないタイミングでした。京都市からご連絡いただいたことがきっかけだったと思います。
我々が環境問題に取り組んでいた理由としては、三井物産と博報堂の共同のプロジェクトから始まっています。博報堂の方が社会課題の解決という分野に対しての活動が限定的だったという背景がありました。そこで2020年頃から、博報堂が培ってきたクリエイティビティ(発想する力・実装する力)を社会課題の解決にきちんと役立てていこうということが会社の中で明文化されました。ビジネスとして大きくインパクト出すこと、社会の課題を解決することが掛け合わさって、環境分野でも特に脱炭素にフォーカスした領域を設定したという流れになっています。

― そのビジネス×社会課題というテーマが、京創ミーティングの目的に合致していて、素晴らしいプロジェクトですね

山本さん: 全国に先駆けてかなり先進的なことをされている京都市とご一緒させていただけるということは、僕らにとっても非常に魅力的でした。
企業はおそらく普通に変わっていくことになりますが、やはり世の中にインパクトを出していくというところで言うと、市民の方たちの行動をどう変えていくかが非常に重要なところだなと思っています。

― ありがとうございます。自治体の中でも環境に関して取り組んでいる京都市との連携は、御社にとってメリットとして感じていただけたのですね。

(写真:京都の街並み)

 

— 京創ミーティング参画への期待・成果やプロジェクトで目指していたこと

山本さん:やはり京都はいろんなことを取り組まれているからこそ、市民の方や世界の方、そしてメディアや企業も含めて全方位的に注目度が高い地域だなというところは感じていました。なので、そういったところで好事例を生み出すことによって注目が集まり、本当にライフスタイルが変わっていくみたいなところですね。そのようなことが巻き起こればいいなという期待感はありました。

 

— プロジェクトの実証とか社会実装に係る変化について、京創ミーティングに参加することで最も望んだことや、2年間のプロジェクトの中での達成度やどこまでを目指しておられましたか

山本さん: 京都市内でカーボンフットプリントのデカボスコアみたいなものがどんどん出ていく流れを生み出せたら最高だったのですが、それは僕らの人為的なリソースの問題でそこまで深くは関わることができませんでした。
その一方で、京創ミーティングのつながりの中で、伝統工芸品のカーボンフットプリント表示など、今までおそらく世界にもあまり事例がないようなものも算出させていただきました。また他のプロジェクトで関わっているGOOD NATURE HOTEL KYOTOとは、ホテル内の商品のデカボスコアを算出して、それをスタンプラリーにして館内を巡る仕掛けをした御朱印帳を模した「脱炭素紋帳/Decarbo collection」を一緒に取り組ませていただきました。表示しているだけではなくて、文脈やストーリーを通じて、しっかりとカーボンフットプリントを理解していただくような機会を提供できたと思っています。
また、その他の事例で言うと、今年(2025年)の6月に上賀茂神社さんと味の素AGFさんと一緒にやらせていただいたイベント(「京都の四季を味わう神山湧水珈琲会 初夏の蛍と夜カフェ 」)がありましたね。実は僕らもちょっと悩んでいる部分があって、環境分野の中で脱炭素のカーボンフットプリントってすごく狭い領域だと自分たちで感じる部分があったのですが、この取組では、水の保全という脱炭素よりもちょっと上のレイヤーの「生物多様性」というテーマまで、僕ら自身の立ち位置も上げて、実際に学生と一緒に保全活動に取り組みました。そして保全活動をしたことを、実際に訪れていただいた市民の方にカフェで知っていただき、マイボトル持参者にデカボスコアに応じて割引を実施しました。
またこのイベントでは、京都市の後援をいただき、僕らとしても普段やれなかったことを「京都ならでは」という文脈でできたっていうのは、僕としてはすごい成果だったなと思います。

— 事業者や京都市との連携により大きな成果が得られていたのですね。

(写真:上賀茂神社の湧水)

 

— 事務局の支援によって誰にどんな変化がありましたか。

山本さん: 例えば、先ほどの上賀茂神社でのイベントの場合、僕らが呼びたくてもなかなか難しそうな地元のメディアから実際に取材に行きます、というように言っていただけたので、メディアでの露出として良いニュースが出ていきました。また皆さんにご協力いただいて、自分たちで「費用対効果が良かったね」というところまで持っていけた結果、「もう一回こういうことをやろう」となっていて、いいサイクルが回るきっかけをいただいているなというのは、非常に感じました。

 

— デカボスコアに関わる人々の行動や気持ちの変化はどうでしょう。

山本さん: Earth hacksでは、「Z世代×企業・自治体」の脱炭素をテーマとした事業共創プロジェクトの「デカボチャレンジ」があります。そのZ世代の学生たちの中に、京都市内に住んでいる学生が約20名います。今回の上賀茂神社のイベントでは、その学生たちにホタルの生息地でもある境内の川の保全整備を行ってもらったのですが、その年は例年よりもホタルが多く見られました。またイベントで自分たちの活動をお客様にプレゼンも行いました。このように自分たちが実際に行ったことが貢献につながったり、人に伝えたりすることで、急速に自分ごと化が進んで、学生から「やり続けたい」という大きな気持ちの変化が起こったんですね。
そこで私自身が感じたのは、カーボンフットプリントという表示はあくまで「点」に過ぎない。それをどうやって「線」にして、人々の行動変容や意識を変えていくかというところが非常に大事だと思いました。おそらく市民の方からすると、なかなか自分から主体的にそういうアクションを起こすのは難しいと思うので、企業側がそういったことを気軽にできるような機会を増やしていくことが大切なんだと気づかされました。

 

— すごいです。学生たちと関わり合う中で、その学生たちや山本さん自身もデカボスコアだけじゃ伝えられない部分のストーリーの大切さに気づいた。そしてイベントに来てくれた人たちも、デカボスコアやそれに関連する生物多様性の保全に関しても、意識が高まっていくというのはすごい良いお話ですね。

(写真:デカボスコア展示の様子)

 

— 今後の事業展開について

山本さん:2030年までにデカボスコア商品やサービスを10,000に拡大すること、あと3~4年でカーボンフットプリントが常識になっていくような世界を目指しています。少し追い風になるのは、2027年にフランスで製品ごとのカーボンフットプリントの表示が義務化されることですね。日本政府も義務化ではないけれど、環境省・経済産業省・農林水産省が僕らのやっているようなカーボンフットプリント表示を強く推奨するといった流れも始まりそうです。そこをチャンスととらえて、2000年代にカロリー表示が当たり前になったように、2020年代にはデカボスコアが新しく商品を選ぶときの一つの基準になる、というところまでもっていきたいと考えています。
世の中の行動変容に、僕らの事業が一定の役割を果たすタイミングが来ているので、そこを目指してやりたいと思っています。

 

— 京創プラットフォームの参加の意義や事務局に期待することは

山本さん:何かやりたいんだけど、仲間がいないのでできないっていう仕事は結構多いなと思っています。その時に気軽に相談してコーディネートいただいたりとか、場を持っていただけたりすることってなかなか民間の企業だけだとあまりないと思いますね。そんなにお世話を焼いてくれる人って全然いなかったりするので(笑)

 

— なるほど。事務局のコーディネーター的な存在があったからこそ、仲間が見つかってプロジェクトが進んでいったのですね。今後事務局に期待することは何かありますか。

山本さん: 事務局としての一定の機能はお揃いになられているという印象です。あるとすれば、情報発信のところでしょうか。例えば事務局がラジオ番組やテレビ番組を持たれていて、そこで取り上げられるようになっているとか。そのような情報発信で強いサポートがあると、さらに魅力的に見えるのではないかと思いました。

 

— ありがとうございます。京創プラットフォームの取組は、ほかの自治体さんでもご存知ではない場合が多いので、今後より広報を広げていけたらと思います。市民に伝えたいメッセージをお願いします。

山本: 今まで世の中が脱炭素目標を達成するためにやってきたのは、例えば、夏にみんなでクーラーの温度を2℃上げましょうという「課題解決型」だと思います。ですが、僕らが目指しているのは「楽しく」、「かっこいいな」とか「いいな」というような、自分が貢献できている実感も伝わるような「欲望刺激型」にしていくことをよく伝えさせていただいています。なので、楽しく前向きに環境に貢献することを、これからも一緒に続けていければと思っています。

(写真:インタビューの様子※画面下部 山本さん)

 

(インタビューは、2025年9月に実施しました。)

Profile
Earth hacks株式会社
環境に配慮した商品又はサービスの提供

生活者がどれだけ脱炭素ライフをおくりたくても、
適した商品・サービスがなければ実現できない。
企業がいくら脱炭素を推進しても、
生活者がそれを魅力に思わなければ、経済はまわらない。
わたしたち『Earth hacks & Co.』は、
生活者のアクションと、
企業の努力をつなぎ、
「脱炭素化した方が商品が売れる。商品が売れるから脱炭素化が進む。」
好循環を生み出し、持続可能な社会を実現するデカボ・サイクル・カンパニーです。
  • Website
  • Instagram
Earth hacks株式会社の記事一覧へ >

Back to Top