脱炭素先行地域とは
2030 年度までに民生部門(家庭部門及び業務部門)の電力消費に伴うCO2排出量の実質ゼロを地域の特性に応じて実現する地域のこと。
本市は、「京都の文化・暮らしの脱炭素化で地域力を向上させるゼロカーボン古都モデル」をテーマに掲げ、2022年11月に環境省により脱炭素先行地域に選定されました。
幅広い分野から40を超える事業者の方々と共に、文化遺産、商店街、住まい等の脱炭素転換を推進するために、様々な取組を進めています。また、これらの取組を通じて、地域課題の解決や住民の暮らしの質の向上等、京都ならではの脱炭素転換モデルを構築していきます。
https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000305/305694/zigyougaiyou0526.pdf
京都市役所からすぐ、連日多くの買い物客や観光客が訪れる新京極商店街にある誓願寺。
京都市脱炭素先行地域づくり事業補助金を活用し、省エネエアコンに更新するだけでなく、それをきっかけに、防災や子育てなど、地域コミュニティの活性化につながる取組が進んでいます。
今回は、地域の方々と積極的につながり、取組をけん引されている誓願寺執事の石倉真明さん(以下、石倉さん)にお話しいただきました。
お寺を誰もが立ち寄れる「安寧の場」に
まるでサウナの様だったかつての本堂。
エアコンの必要性を実感しつつも、導入するまでには、お寺ならではの悩みも…。
石倉さん: 近年、特に夏場に参拝いただく方々の様子を見ていても、本堂内の暑さのせいもあり、心安らかにお参りいただけてないのではないか。また、足しげく通ってくださるご高齢の方々のことを思うと、心配にもなる上に、申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、この補助金のことを紹介いただき、これを機に、省エネエアコンを導入し、脱炭素転換にも貢献していこうと思った次第です。
とはいえ、いざ設置するにしても、参拝いただく方が落ち着いてお参りできる雰囲気を損なったり、また、ご本尊やその他の荘厳具(しょうごんぐ)などに直接、強い風が当たって揺れたり、傷つけたりしないようにということを心掛けました。
よく見かける家庭用の壁掛けエアコンだと、壁に穴を開ける必要があり、本堂の雰囲気を損なうことにもなるので、床置きのエアコンを採用しました。ですが、そのまま、畳の上に設置してしまうと、エアコンの重みで畳が沈み込んでしまうことになりますので、エアコンを板の間に直接、設置するために、エアコンの底面のサイズに合わせて、畳を切り取る加工をさせていただきました。

本殿参拝スペース

床置き型エアコン(計8台設置)
本堂は参拝される方々の出入りが頻繁にあり、どうしても冷気が逃げる原因にもなりますので、今回の補助金で設置したものではないですが、エアカーテンを設置することで、本堂内の空調の効率化につなげています。
おかげさまで、参拝される方々の様子を拝見していても、快適に、ゆっくりと過ごしていただけている印象があります。もちろん、法衣、袈裟を着る私どもも、夏場の暑さは非常につらかったのですが、空調の効いた中でお勤めできるようになり、大助かりです。
新京極商店街を訪れる子ども連れの方々にも気楽に立ち寄っていただければとも思っているのですが、「授乳やオムツ替えの場所に困る」、「オムツを持ち帰るのに気を使う」という親御さんのお声をよく耳にします。大きな商業施設などには授乳スペースが設置されていたりもしますが、すぐに立ち寄れるとも限りません。施設オーナーの方々も「場所を提供したい」という気持ちはあっても、セキュリティなどの問題から、オープンなスペースを作りにくいのというお話も聞いたことがあります。その点、ここにはスペースがありますし、敷地の片隅であれば提供することができるかもしれない。今回導入したようなエアコンを活用すれば、子どもたちにも快適に過ごしていただけます。

音楽イベント時の休憩スペースの様子
先日、地域で音楽イベントが開催された際、試験的に子ども連れの参加者が休めるスペースを設けました。大々的な周知はしていませんでしたが、実際に何組か利用してくださり、子どもたちも畳の上で嬉しそうに遊んでいました。知り合いの保育士さんや学童スタッフに手伝ってもらい、お絵かきなどをして楽しめるようにしました。
今後はこれに工夫を加え、商店街での買い物途中にふらっと立ち寄れるスペースを整備していきたいと考えています。将来は地域のおじいちゃん、おばあちゃんにもお手伝いただきたい。お寺だけでなく、地域の方々と一緒にスペースを作っていける手応えを感じています。
神社もお寺も垣根を超えて。「顔を広く深く知る」ことが最高の地域防災
エアコン導入を通じて、地域の方々が主体的に関わり、集う仕組みの創出へ
石倉さん:子ども連れスペースなど試験的な活動を通して、最近はありがたいことに地域の方から「○○みたいな場所を作れないか」と話を持ちかけられることもあります。商店街や地域の方々にフラットに本音で困りごとを話していただき、みんなで共有するところから新しいつながりが生まれています。子どものことや熱中症対策も、誰もが「自分ごと」として考えてくれる。今までは商店街は商店街、誓願寺は誓願寺と見えない壁のようなものがあったのかもしれませんが、商店街にある誓願寺、誓願寺あっての商店街と、共にこの地で暮らすものとして、遠慮することなくつながり、お互いのことを思いやれる関係になっていることは素晴らしい限り。まさに「顔が見える関係」ですね。いざという時に誰かの顔が思い浮かぶことは今の時代に本当に重要だと思います。
例えば、そのような関係ができたことで、地域防災にも役立っています。商店街や学区の自主防災会、消防団の方々と防災意識を高めるためのLINEグループも作成しました。

「寺域防災」イベントの様子
勝手に「寺域防災」と名付けて、些細なことでも、みんなで情報共有できるようになっています。また、その枠組みを生かして、誓願寺を会場にして、みんなで救命講習を受講したりするなど、実際に集まって、活動することにもつながっています。やはり、災害は立場や属性に関係なく、同じように被害があるものですので、利害関係を考えることなく、同じ地域の一員として、真摯に向き合っていけるのだと思います。
その他にも、当寺と同じく新京極商店街に位置する錦天満宮の宮司さんとも非常に仲良くさせていただいています。若いスタッフが行き来したり、一緒に勉強会をしたり。
錦天満宮から誓願寺へ、あるいはその逆へと、お互いにお参りし、商店街の人たちと一緒に練り歩くようなことも企画しています。
「脱炭素×御朱印」でワクワクを仕掛け、市民活動として持続する仕組みへ
地域のみんなで脱炭素転換を考えて、次世代に関心を持ってもらうための工夫も
石倉さん: 脱炭素転換の取組をいかに自分事と思ってもらうか。次世代を担う子どもたちにも関心を持ってもらうか。そのためにも何かできないかということで、近々、子ども向けの脱炭素スタンプラリーを企画しています。「もし電気が止まったらどうなるか」などを学びながら、太陽光発電の仕組みなど、「脱炭素」についても親子で一緒になって考え、学べる内容にしていきたいと思っています。その際には、地域全体でブースを出せたらより面白くなるねと、地域の方からもアイデアをもらっています。
また、誓願寺の周辺には、同じように脱炭素先行地域の補助金を受けて、省エネ設備や太陽光発電の導入に取り組んでいるお寺がいくつかあります。この取組を知って、これから取り組んでいこうとされている寺院もいらっしゃいます。新京極界隈の脱炭素転換寺社を巡る御朱印ラリーができても面白いのではないかと考えています。御朱印集めには様々な意見もありますが、「お寺に来ていただく入り口」として非常に有効です。専用の御朱印帳も用意し、簡単なチェックシートや、脱炭素転換に役立つコラムなど、「ここからみんなで脱炭素に取り組みましょう」と提案することができれば、取り組むハードルも下がるのではないでしょうか。
新京極界隈以外にも、この補助金を活用して、脱炭素に取り組んでおられる寺社がたくさんおられるとも聞いていますので、そうした寺社が、格式や宗派などにとらわれず、一堂に会し、「うちはやって良かった」「こういう反響があった」という成功事例を課題とともに共有し合いたい。そうしたことができれば、何から取り組めば良いのか、悩んでおられる寺社が取り組む後押しになるのではないかと思っています。
誓願寺はサードプレイスではなく「ガイドポスト(道しるべ)」
地域の誰もが集える場の提供だけでなく、お寺だからこそできる役割を再認識
石倉さん: 昨年は、商店街や消防団の熱心な方が中心となり、住民防災の一環としてみんなで「ロケットストーブ」を作製する企画を実施しました。災害時に何が必要かを考えつつ、まずは「みんなで顔を合わせる」ことが目的です。
地域のみんなが集まることで「商店街のごみの散乱問題や災害時の避難、高齢化と担い手不足」など、様々な課題を共有することができました。これらを個別に解決しようとすると、人も時間も足りません。しかし、「お互いの顔を深く知る」ことで、全く違う問題のように見えても、全員が「自分たちの問題」として助け合えるようになります。
とは言え、「地域のつながりが大事」と真正面から正論を言ってもなかなか人は集まりません。だから「ロケットストーブやるからおいで」「スタンプラリーやるからおいで」と、まずは楽しいきっかけを作って、その場に出てきてもらうことから始まるのです。

迷子のしるべ(奇縁氷人石)
誓願寺の門前に「迷子のしるべ(奇縁氷人石)」があるのはご存知でしょうか?かつての誓願寺は広大な境内を有し、京都でも屈指の盛り場でしたが、警察組織がない時代には、迷子を見つけるため、あるいは迷子の情報を教えてあげるために、皆さんが集う場所でもありました。
お寺の本質は「人が再会できる場所」であると同時に、「自分自身を見つける場所」でもあります。私自身も含めて、私たちはみんな人生の迷子です。迷っている者同士だからこそ、フラットに響き合うコミュニケーションが取れる。それがお寺の持つ力なのです。
最近、家庭でも職場でもない第三の居場所として「サードプレイス」が注目され、お寺をサードプレイスと言う方もいらっしゃいます。それも間違いではないと思いますが、私はどちらかというと「ガイドポスト」となることができるのがお寺だと思っています。言うならば、皆さんの心の中にある道しるべ。
地域のためにと、自己犠牲や奉仕でやる活動は長続きしません。だからこそ、まずは「とにかく楽しいことをやろう」と。誓願寺も一緒になって取り組んでいることが示せれば、脱炭素転換や地域活動の道しるべにもなっていくのだと。人と人が顔の見えるつながりを持ち、様々な取組の輪が広がっていくために、私ども誓願寺が一助になれればと思います。
(執筆:舩槻 信也、田村 大輔)
市内で最も古い市街地の一つであり、寺社や商店街といった地域コミュニティを中心に地域力が形成され、また、COP3を記念して開館した京エコロジーセンターをはじめとする環境関連施設が集積するなど、四半世紀にわたって循環型社会の基盤を担い、環境共生・低炭素社会の魁さきがけを目指してきた伏見エリアを中心としつつ、全市を視野に入れ、地域の皆様とともに多様な取組を展開することで、京都ならではの脱炭素転換モデルを構築していきます。
飛鳥時代に創建され、天正19(1591)年に現在地の三条寺町に移転。浄土宗西山深草派の総本山。落語発祥の地と知られる他、清少納言や和泉式部といった女流作家とも縁が深く、今日でも芸道、芸能の関係者が上達を祈願し参詣。
<脱炭素先行地域づくり事業補助金>
令和7年度に高効率空調機器を導入のうえ、再エネ100%電力への切替を実施
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