撮影:有光 悠希
髙橋藍が語る、ポジティブ思考と見える化でつくる2050年の未来
撮影:有光 悠希
サントリーサンバーズ大阪・髙橋藍選手。
イタリア・セリエAでの挑戦を経て、日本代表として世界と向き合う彼が語ってくれたのは、「前向きに一歩踏み出すこと」と「続けること」の大切さでした。
「一人の力には限界がある」と語る彼が、中学時代の地道なストレッチから培ってきた「積み重ねの哲学」とは。私たちが今日から始められる一歩を、髙橋選手の言葉から探ります。
イタリアで知った「KYOTO」の誇りと、肌で感じる故郷の異変

−−イタリアをはじめ、海外でプレーされるなかで、改めて故郷・京都について感じることはありますか?
イタリアに行って驚いたのは、京都という地名の持つ圧倒的なパワーです。「日本のどこから来たんだ?」と聞かれて「京都だ」と答えると、みんなの顔がパッと輝くんです。
チームメイトもスタッフも、誰もが京都を知っているし、「一度は行ってみたい憧れの場所だ」と言ってくれる。歴史が息づき、日本文化を感じる場所として、京都が世界中の人々の心に届いている。本当に誇らしいなと実感します。

−−ご自身にとって、京都の魅力はどこにありますか?
僕の実家がある太秦や嵐山の近くは、観光地でありながらも、生活の場としてはすごく落ち着いているんです。一歩路地に入れば静かな生活がある。身近に豊かな自然があり、ごはんもおいしい。世界中を回っても、やはり京都は「生活のしやすさ」という点でも素晴らしい場所だと感じています。
−−一方で、京都の夏は「暑さが厳しい」ことでも知られています。近年の気候の変化について、感じることはありますか。
たしかにもともと京都の夏は蒸し暑いですが、最近の暑さは以前とは質が違う気がします。東山高校でプレーしていた頃を思い返すと、夏は暑いけれど、まだ「耐えられる暑さ」だった。でも、今は日差しが痛いと感じるほどです。


暑くなる時期も早まりましたし、秋になってもなかなか気温が下がらない。「夏が長くなった」という感覚は、ここ数年でさらに強まっています。
京都だけの問題ではないと思いますが、生活する上でも、プレーを続ける上でも、無視できない課題になっていると感じますね。
感情に頼らず、記録を見る。「小さな積み重ね」を信じられる理由

−−暑さや環境の変化があるなかでも良いプレーを続けるために、髙橋選手はなにか続けていることはありますか?
実は僕、中学時代はものすごく体が硬かったんです。それが嫌で、寝る前にストレッチを始めました。最初は全然効果が出なくて「本当に意味があるのかな」と思う時期もありましたが、毎日欠かさず続けて1ヶ月経った頃、ふと「あ、柔らかくなってる」と確かな変化を感じたんです。

−−変化を感じられたことが、続けるモチベーションになったのですね。変化を実感し、継続するためのコツはありますか。
「記録として残すこと」を大切にしています。例えば、ストレッチをしている姿を動画に撮っておくんです。毎日鏡を見ていると気づきませんが、1ヶ月前の動画と比べると、明らかに体が柔らかくなっているのがわかる。
客観的に自分の成長を確認できると「よし、もっとやろう」というポジティブな気持ちになれます。環境問題への取り組みも、自分の行動がどう変化したかを可視化できれば、もっと楽しく続けられるのかもしれませんね。
−−いいですね!自分の行動を見える化することで、変化を実感しやすくなりますね。可視化を意識することで、未来を変える一歩を続けていけるのかもしれません。
「自分の緊張なんて、世界で見ればちっぽけ」髙橋藍を突き動かす、視点の切り替え

−−髙橋選手のプレースタイルや発言からは、常に前向きなエネルギーを感じます。その「ポジティブ思考」の根源はどこにあるのでしょうか。
実は、最初からポジティブだったわけではないんです。両親の、とくに母の影響が大きいです。高校時代まではすごく緊張しやすくて、不安ばかり抱えていました。「負けたらどうしよう」と心配でたまらなかった。
でも、高校3年生の時に「自分のこの緊張って、地球規模で見たらどれだけちっぽけなことだろう」と考え直したんです。そう思ったら、緊張して縮こまっているのがなんだか馬鹿らしくなってきた(笑)。そこから、自信を持ってコートに立てるようになりました。

−−ネガティブな感情が湧いてきたとき、どうやって切り替えているのですか?
試合に負けて落ち込むことは誰にでもできます。でも、「この負けは、自分がさらに強くなるための最高の材料だ」と置き換える。負けた瞬間に、「次勝つために何をすべきか」というスタート地点に立てるかどうかで、その後の成長スピードが変わります。
未来のことを考えることもポイントかもしれません。僕だったら、オリンピックという4年のサイクルがあり、常に5年先を考えています。今のしんどい状況も、未来につなげれば「レベルアップのチャンス」だと捉えられると思うんです。

−−環境問題のような大きな課題も、ポジティブに捉えられますか?
「自分一人が頑張っても……」とネガティブになるより、「これをすれば少しでも良くなる」とプラスに考える。そのスタート地点に立つことが、未来を変える第一歩になるはずです。
環境問題もみんながチームメイト。2050年、49歳の僕が見たい景色

−−2050年、バレーボールがどんなスポーツになっていてほしいと願いますか。
バレーボールが今よりもっと「夢のあるスポーツ」に進化していてほしいですね。次世代の子どもたちが、スポーツを通じて世界へ羽ばたき、多様な経験ができる環境を守りたい。そのために、49歳の僕も何らかの形でバレーに携わり、バレーの面白さを伝えていたいと思っています。
−−最後に、環境問題という「チーム戦」を戦う読者へメッセージをお願いします。
チームスポーツをプレイしていて痛感するのは、「一人の力には限界がある」ということです。環境問題も同じです。誰か一人だけが頑張るのではなく、家族、友人、地域……みんなが「チームメイト」として同じ方向を向く。環境を悪くするのが人間なら、良くできるのも人間のはず。


我慢して取り組む必要はありません。自分の生活が少し豊かになるような、楽しみながらできる選択を積み重ねていく。自分の体をケアするように、地球のケアも日常のルーティンに組み込むといいのではないでしょうか。
一人ひとりが「やってみる」一歩を踏み出すことが、2050年の未来を変えるチームプレーになるはずです!

2050年のコートで笑うために。髙橋藍選手と踏み出す、明日への一歩
「一人の力には限界がある。だから、みんなでやりたいんです」。髙橋選手の言葉は、決してあきらめから出たものではありません。チームを、未来を、信じ切る強さがそこにはありました。
彼が毎日、一本のストレッチを欠かさないように。私たちが生活のなかで選ぶ今日の小さな一歩が、2050年のコートで次世代の子どもたちが笑っているための「チームプレー」になる。そのラリーは、ここから始まります。

プロバレーボール選手
2001年9月2日生まれ、京都府出身のプロバレーボール選手。高い守備力と攻撃力を兼ね備えたアウトサイドヒッターで、2021年東京・2024年パリ五輪代表。東山高、日体大を経て、イタリア・セリエAで活躍後、2024年5月からSVリーグのサントリーサンバーズ大阪に所属。 髙橋 藍の記事一覧へ >
ライター
現在は、22歳年上の夫と京都で2人暮らしをしながら、フリーランスのエッセイスト、取材ライターとして活動。 このライターの記事一覧へ >
